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以前、世界的な報道機関のロイターがプロペシアの副作用や後遺症の問題をスクープとして発表
「メリク社の秘密を守る手助けを裁判所がする」というタイトルの記事を2019年10月を報じたことはブログで紹介しました。
2021年2月更新 (重要ポイント)
当時、ロイターが裁判所に対し、メリク社が提出した裁判資料などの開示請求を申請。
PL法(製造者責任)に関連する裁判の多くで、裁判資料の開示がされず、そこで明かされた証拠を一般の方が目にすることができないことが問題視されていました。
プロペシアに関連する1100件の集団訴訟が2012年に起こされ、2018年にメリク社は5億円での和解をしていました。
裁判内容や証拠が開示されず、和解に応じる条件として、内容を秘匿することが条件となっている為、訴訟の関係者が以外は内容を知る余地はありませんでした。
ところがロイターが2019年10月に起こした開示請求を2021年1月26日、Peggy Kuo判事が認め、メリク社に対し、「提出資料は秘匿で開示されるべきではない」という根拠はどこにもないとの判決を下しました。
Judge orders Merck documents on anti-baldness drug Propecia unsealedA U.S. judge granted a Reuters request to unseal Merck & Co documents produced in lawsuits related to its anti-baldness treatment Propecia, finding that the public's right to acces…jp.reuters.com
当時のロイター社の報道によれば、メリク社は承認されてから4年ほどした時点で、副作用などの事実を知っていたこと。
「服用を中止しても回復が見られない患者がいることをメリク社幹部は知りながら、必要な注意喚起や対策を取らず、隠ぺいしていた」
という当時メリク社の幹部の証言などが含まれているそうです。
関係者の一人は、これらの証言や提示された証拠が裁判で露呈した為、500億円の和解金の支払いをメリク社が応じたと話しているそうです。
開示請求命令の判決が出て、1週間。まだ裁判や証拠資料の開示はされていません。
この判決を不服として、メリク社が上告する可能性もあります。
ですがこのままいけば、プロペシアの副作用をメリク社がいつから知り、実際どのような訴えが患者からあったのか?
500億円もの和解金を払ってまで、何を知られたくなかったのかが、公表される可能性が強くなりました。
2019年10月のロイター社が裁判資料の情報開示を申請した経緯は以下で紹介しています。
今回の報道はアメリカで起こる様々な裁判において、証人の証言やデータが原告または被告代理人の意見を元に、裁判官の判断で、一般に開示されない事例があまりにも多すぎること。
仮に情報の開示がされていれば、それ以上の被害者を防げるにも関わらず、裁判官が十分な熟慮をしないまま、多くの内容が非公表になっている問題を追及する記事の一環で報じられました。
証言内容や証拠の封印は、プロダクトライアビリティ、 PL法の裁判で、特に見られます。(製造物責任法について 製品の欠陥によって生命,身体又は財産に損害を被ったことを証明した場合に,被害者は製造会社などに対して損害賠償を求めることができる法律)
正当な理由がなく、十分な検証が行われないまま、様々な証言や証拠が一般開示されないことを問題視した、アメリカの連邦下院議会司法委員会が連邦裁判所の透明度が欠如している点の委員会を9月26日に実施することになりました。
この問題を追及していたロイターが、偶然にもプロペシアの副作用や後遺症の裁判の中で、プロペシアが承認された当時の臨床開発プログラムのトップのカフマン氏やメリク社の元上級取締役のメリット氏。広報担当のハウズ氏の封印されていた証言が、連邦裁判所の事務の不手際により、黒塗りで内容が確認出来なかった裁判記録をロイターの記者が読むことができたことで大きく報道されました。
特に問題視されているのが、1997年にプロペシアが承認されてから、2002年に初めてプロペシアの注意書きが改定された際、メリク社の上層部が「長期服用による、性的な副作用や後遺症の発症率を0.3%以下と注意書きに記載するにはデータをどのように用いるべきか?」と議論があったと開発責任者のカフマン氏は証言。
「5年の服用の発症率で、0.3%以下としながら、実際には1年目時点でのデータを元に、改定された注意書きは書かれていること。
実際5年間服用した、治験参加者の中で3年目以降、性欲減退などを23名が訴えているとの報告をメリク社のアナリストが上級役員に報告をいれたメールが存在したこと。
5年の治験期間中に、治療を中断し、離脱した参加者や、実際、副作用に悩み、離脱した6名の患者のデータを反映させないまま、2002年の注意書きの改定がおこなわれた。」とカフマン氏は証言。
「プロペシアの5年間の治験期間に、離脱した患者や副作用を発症し、棄権した患者を除外したデータでは、正確な副作用の発症率を確認できないと会社に報告したが取り合ってもらえなかった。」
会社としてはどうしても、5年の長期服用による発症率を低くする為に、本来は考えられない、方法で採取したデータを元に注意書きを書いた」とも証言している。
これに対し、元メリク社の上級役員の1人であった、メリット氏は、「当時メリク社では、途中離脱した患者や副作用を発症した患者の継続調査を行う考えや、中止後に改善に至ったかの調査を行う考えは社内になかった」と証言。
また裁判の中で、メリット氏に「2002年に改定された注意書きに性機能の低下の発症や、服用中止後も症状が継続した明記することはできたか?」と尋ねられると、メリット氏は「もしメリク社がデータの元ついて、注意書きを書かなくてはいけないと考えていれば、そのように記載できたであろう。なぜ、そうしなかったかは、私にはわからないと」証言をした。
1999年のメリク社の社内文書で共有されたデータを元に広報担当責任者のハウズ氏に対しおこなった質問の中で、「もし、プロペシアに一時的または、継続的な副作用や後遺症が生じる恐れがあると公表した場合、それがプロペシア離れを起こすことをメリク社は危惧していたか?」という質問に対し、ハウズ氏は「はい」と回答。
さらに「メリク社は副作用や後遺症についての問題を重要視し、どのように公表するべきかとの懸念をもっていたか?」という質問に対しても、ハウズ氏は「はい」と回答した。
直接関与した、責任者の重要証言や証拠が裁判官の判断により、非開示扱いとされていることにロイター社は問題提起をしており、もし公表されていれば、もっと多くの被害者を防ぐことができるはずだと締めくくっています。
連邦下院司法委員会も問題視しており、非開示になる資料の判断についての会合が行われる。
マイケルジャクソンが亡くなった原因とされるオピオイドの中毒性や死亡事例など、正確な情報の開示義務を怠った、製薬会社が、被害者に対し、4000億円にも及ぶ、慰謝料を払うことで示談を持ちかけているのが大きく報道されています。
メリク社も以前起こされた、集団訴訟の原告の一部との示談を成立させており、示談金の支払と引き換えに、裁判中に開示された証拠や証言などについて公表をしないことを条件としているようです。
今回、ロイターが偶然に発見した、裁判の公文書の黒塗りされた、関係者の証言も驚くべき内容だが、もし、この裁判が公開裁判で行われていれば、さらに衝撃的な内容になると思います。
何より、今回の裁判での証言だけでも、これまでの製薬会社の説明やデータに疑問が残り、「プロペシアやフィナステリドなどのジェネリック薬に書かれた注意書きや、製薬会社から提供されたデータを元に行われている医師の説明」の信憑性にも懸念が生じます。
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